小説

第四章 闇の石 三

 木々の間から差し込む朝日が眩しかった。  すり抜けてゆくそよ風が、心地よかった。  だが…… 「助けてもらったことについては礼を言う。だが、何故殺した」  夢幻は、苦々しい思いとともに言葉を吐き出した。  ウリルは、夢... 続きを読む

幻影の少女

 夢を見る。  今はない故郷の夢。  溢れる緑。流れるせせらぎ。  穏やかに流れる刻。  そして。  眩しいほどに、赤い少女。  あの頃は、それが永遠に続くと思っていた。  平穏で。何も変わらず。  あの頃は、それが嫌だ... 続きを読む

第四章 闇の石 二

 その男の姿を認めるや否や、夢幻は走り出していた。  地面を蹴り、長剣を抜き。狭い通路の壁と、ほとんど影にしか見えない男の間のわずかな隙間に突っ込む。  ガキイィィィン!  金属がぶつかり合う甲高い音が響き渡る。  弾き... 続きを読む

第四章 闇の石 一

「シュンはね、ウリルのことが好きだったの」  サシャが呟く。歌うように。囁くように。  もう動くことのないシュンの頭を膝の上に乗せて、優しく撫で続けている。  その身体は急速に冷たくなっていき、血液も、それ以外の体内に収... 続きを読む

第三章 盗賊団 三

 ガンッ!ガンッ!  断続的に殴りつけられる音。その度に扉がたわみ、部屋が衝撃に揺れる。  打撃音に混じって聞こえるのは、うなり声。息づかい。特有の、嫌な気配。間違いようもない。魔物のものだ。  何故、巧妙に隠されている... 続きを読む

第三章 盗賊団 二

 サシャが規則正しい寝息を立てたのを確認してからその身体に布団をかけ直すと、ウリルは静かに寝室を出た。  ずっと開けっ放しになっていた寝室の扉を、大きな音が立たないようにそっと閉める。扉がきちんと閉まったことを確認してか... 続きを読む

第三章 盗賊団  一

「突然呼び出してすまないな」  執務用の机から立ち上がって、そいつは申し訳なさそうに言った。 「別に、気にしなくていいわよ。そんなに忙しく過ごしているわけでもないし、私は、貴方の下についているわけだしね」  知っている。... 続きを読む

第二章 魔道士 三

 盗賊団の頭であるウリルに先導され、夢幻は森の更に奥までやって来た。  バルガを始めとした盗賊団の面々は、ウリルの指示により森の巡回に散って行った。そのため、今ここにいるのは夢幻とウリルの二人だけである。  道中、会話は... 続きを読む

第二章 魔道士 二

 早朝の森は、深い霧と静寂に包まれていた。  しっとりと湿気を帯び、ぬかるんだ地面を踏みしめて。夢幻は森の奥へと向かっていた。  天候と時間の条件があまりよくない割りに、道程は順調であった。警戒していた、魔物の襲撃もない... 続きを読む

第二章 魔道士 一

 夢幻が村に到着したのは、すっかり夜も更けてからであった  大陸警備機構仕込みの追跡術を駆使して女を追った結果、痕跡はこの村の方向に続き。村の手前で唐突に途切れた。  故意に痕跡を消した。明らかに、そんな感じであった。そ... 続きを読む

祭の夜に

※1996年に発表した作品を大幅に加筆修正したものです。    控え室を出たあたしの目の前に、一輪の小さな野花が差し出された。 「え…あたし…に?」  驚いて尋ねると、野花の差し出し主は黙ったままこくりと頷いた... 続きを読む

創世語(そうせいのかたり)

 街の酒場は、昼と夕の狭間という中途半端な時刻にも関わらず混雑していた。  大半は休憩中の船乗りや職人達で、真っ昼間から豪快に酒をあおっている者も多い。それに混ざって旅人らしき姿がちらほら、といったところだろう。混雑した... 続きを読む