柊夢幻サイド2.a close good friend
変な奴だと思った。 人との会話の仕方を知らない奴だった。 常識というものを知らない奴だった。 何を考えているのか、全然わからなかった。 この辺りでは珍しい髪と瞳の色も相まって、別世界の人間のようだった。 ほとんど記憶にない叔父に連れられて…
そして、前へ踏み出していく
柊夢幻サイド1.senior officer
「シャイア。入るぞ」 その言葉と共に、室内に踏み込んでくる気配を感じた時、私は目の前に山と詰まれた箱の中身を確認していた。 朝からひっきりなしに挨拶や荷物の配達で人が頻繁に出入りすることもあって、扉は開きっぱなし。誰が入ってきてもおかしくな…
そして、前へ踏み出していく
柊夢幻サイド0.at the highest level
「納得できない。って顔をしているな」「いえ、そんなことありません」 私の言葉に、彼女は凛とした声できっぱりと言い放った。 しかし、宙を泳ぐ碧い瞳。何かをこらえるように引き結ばれた口元。彼女が内心でかなりの動揺を抱いていることは、少し人を見る…
そして、前へ踏み出していく
一 親愛なる貴方へ
憧れの人がいた。 とても身近な存在で。 とても頭がよくて。 とても強くて、格好よくて。 そして私を、とても愛してくれた。 だけどある日、 永遠に失ってしまった。 突然の別れに、どうしていいかわからなくて。 周りには平然を装っていたけれど。…
親愛なるあなたへ
二 女神はうたう
子供のころ通っていた教会に、一枚のレリーフが飾られていた。 描かれていたのは、ひとりの女性の横顔。 長い髪を風になびかせて。 うたうように。祈るように虚空を仰ぎ見る。 それはこの世界を救ったと云われる女神。 その表情は穏やかで。慈愛に満ち…
親愛なるあなたへ
三 贖罪
私には、心がなかった。 無表情。無頓着。酷薄。 何を考えているのかわからない。 情というものを、感じない。 そんな周囲の風評を、私はただ客観的に眺めていた。 反論はなかった。 考え方を改めることもなかった。 私には、他の考え方がわからなか…
親愛なるあなたへ
ライブアライブ感想戦
リメイクから入った初見勢の勢いだけのレポートです。発売前にプレゼンしてくれた友人にお渡しするために作ったものなのでPDFです。小冊子印刷すると何とA5、8ページの本になります。あと、がっつりネタバレあるのでご了承ください。20220902L…
二次創作(小説)ライブアライブ
都通りに風が吹く 四
翌朝。 夢幻の姿は大陸警備機構本部に併設された病院にあった。隣には制服姿のエアが付き従っている。「何か、ダシに使ったみたいで悪いな」 夢幻は病院の廊下を歩きながら呟くように言った。 あの後、エアの先導によってやってきた救急隊によってロキシ…
都通りに風が吹く
都通りに風が吹く 三
エアの先輩に当たる受付嬢に一方的に後のことを任せて、三人は大陸警備機構本部を出た。 追跡の魔法を使用するウリルの先導で街を走り、たどり着いた場所は閑静な住宅街の一角。 地下水路はセントラルシティの地下隅々まで張り巡らされており、入口も街の…
都通りに風が吹く
都通りに風が吹く 二
事務部は、一階中央。つまり、吹き抜けの丁度中央部分から奥側に位置している。 吹き抜け沿いの階段を下りる夢幻は、その中央部分に当たる総合案内受付に見知った姿を発見した。 バンダナでまとめられた亜麻色の髪。革のベストに膝丈のスカート。すらりと…
都通りに風が吹く
都通りに風が吹く 一
窓から差し込む朝日に、男は目を開いた。 視界に飛び込んでくる景色は、所々がすすけた木の天井。無造作に荷物が置かれた文机。カーテンのかかっていない窓。 閉業して久しく使われていなかった宿屋を修繕したらしいこの寮室は狭くて簡素であり、普通に生…
都通りに風が吹く
そして春がやってくる
※the woRks original 41 パンフレット寄稿。 表紙と中表紙を担当した友人のさちねちゃんとリヒトさん夫妻のキャラクターをイメージした一次創作の二次創作です。 公開に快諾いただいたお二人に感謝。 「はあ……はあっ……
二次創作(小説)