1.公務員冒険者と盗賊団

エピローグ

 森の奥から、いくつも筋状の煙が上がっていた。 俺は、その煙を横目に森から出ようと足を速める。 あの後、盗賊団の頭は後始末をするからと力を失ったサシャの身体を抱えてアジトへと戻っていった。煙の具合から、脱出する際に燃やした入口だけではなくア…

第四章 闇の石 三

 木々の間から差し込む朝日が眩しかった。 すり抜けてゆくそよ風が、心地よかった。 だが……「助けてもらったことについては礼を言う。だが、何故殺した」 夢幻は、苦々しい思いとともに言葉を吐き出した。 ウリルは、夢幻が言っていることの意味がわか…

第四章 闇の石 二

 その男の姿を認めるや否や、夢幻は走り出していた。 地面を蹴り、長剣を抜き。狭い通路の壁と、ほとんど影にしか見えない男の間のわずかな隙間に突っ込む。 ガキイィィィン! 金属がぶつかり合う甲高い音が響き渡る。 弾き飛ばされる身体。それを見て、…

第四章 闇の石 一

「シュンはね、ウリルのことが好きだったの」 サシャが呟く。歌うように。囁くように。 もう動くことのないシュンの頭を膝の上に乗せて、優しく撫で続けている。 その身体は急速に冷たくなっていき、血液も、それ以外の体内に収まるべきものも、あふれてこ…

第三章 盗賊団 三

 ガンッ!ガンッ! 断続的に殴りつけられる音。その度に扉がたわみ、部屋が衝撃に揺れる。 打撃音に混じって聞こえるのは、うなり声。息づかい。特有の、嫌な気配。間違いようもない。魔物のものだ。 何故、巧妙に隠されているはずのこのアジトが魔物に襲…

第三章 盗賊団 二

 サシャが規則正しい寝息を立てたのを確認してからその身体に布団をかけ直すと、ウリルは静かに寝室を出た。 ずっと開けっ放しになっていた寝室の扉を、大きな音が立たないようにそっと閉める。扉がきちんと閉まったことを確認してから、ウリルは窓辺に向か…

第三章 盗賊団  一

「突然呼び出してすまないな」 執務用の机から立ち上がって、そいつは申し訳なさそうに言った。「別に、気にしなくていいわよ。そんなに忙しく過ごしているわけでもないし、私は、貴方の下についているわけだしね」 知っている。 申し訳なく思っているのは…

第二章 魔道士 三

 盗賊団の頭であるウリルに先導され、夢幻は森の更に奥までやって来た。 バルガを始めとした盗賊団の面々は、ウリルの指示により森の巡回に散って行った。そのため、今ここにいるのは夢幻とウリルの二人だけである。 道中、会話は一切なかった。 森の中を…

第二章 魔道士 二

 早朝の森は、深い霧と静寂に包まれていた。 しっとりと湿気を帯び、ぬかるんだ地面を踏みしめて。夢幻は森の奥へと向かっていた。 天候と時間の条件があまりよくない割りに、道程は順調であった。警戒していた、魔物の襲撃もない。時間帯の問題なのか、そ…

第二章 魔道士 一

 夢幻が村に到着したのは、すっかり夜も更けてからであった 大陸警備機構仕込みの追跡術を駆使して女を追った結果、痕跡はこの村の方向に続き。村の手前で唐突に途切れた。 故意に痕跡を消した。明らかに、そんな感じであった。そのような技術は、当然存在…

第一章 出会い 三

「夢幻!またこんなところでサボって!」 頭上から降り注ぐ、鈴を鳴らしたような愛らしい声。 その声に少年は、閉じていた瞳を薄く開いた。 視界に飛び込んできたのは、うたた寝をしていた少年にとっては、まぶしすぎる陽の光。そして、それよりもさらにま…

第一章 出会い 二

「ここまで来れば、大丈夫か」 森を抜け、街道まで出たところで、ようやく夢幻は足を止めた。 振り返り、森の入り口を見る。 来た時と同じく、広がるうっそうとした木々。そこに、動くものの姿は見当たらない。 ふう。 安堵のため息をもらす夢幻の耳元で…