短編・読み切り

幻影の少女

 夢を見る。 今はない故郷の夢。 溢れる緑。流れるせせらぎ。 穏やかに流れる刻。 そして。 眩しいほどに、赤い少女。 あの頃は、それが永遠に続くと思っていた。 平穏で。何も変わらず。 あの頃は、それが嫌だった。 外の世界を。夢見続けていた。…

祭の夜に

※1996年に発表した作品を大幅に加筆修正したものです。  控え室を出たあたしの目の前に、一輪の小さな野花が差し出された。「え…あたし…に?」 驚いて尋ねると、野花の差し出し主は黙ったままこくりと頷いた。 あたしと同じくらいの年頃…

創世語(そうせいのかたり)

 街の酒場は、昼と夕の狭間という中途半端な時刻にも関わらず混雑していた。 大半は休憩中の船乗りや職人達で、真っ昼間から豪快に酒をあおっている者も多い。それに混ざって旅人らしき姿がちらほら、といったところだろう。混雑した酒場では、それらの者が…